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夢を描くきっかけの場所にしたいーーゆっくりと自分のペースで叶えた夢

「秋といえば…」

こんにちは。日野市の職員Mです。
夏が終わって、涼しい風が吹き、夜が長くなってきましたね。
秋になると、必ず「読書の秋」という言葉を耳にするのはなぜでしょう。
言葉の由来として挙げられるのは、唐の時代に韓愈(かんゆ)の詩の一節の「涼しい風が吹く秋になって、ようやく灯火の下で読書を楽しめる」だそうです。
昔の人も暑い夏が終わって、ゆっくり読書ができる秋を心待ちにしていたのかもしれません。
今回は、ゆっくり、時間をかけて、絵本屋を開きたいという夢への第一歩を踏み出した方のストーリーをお話しします。

絵本に魅力を感じたきっかけ

市内を流れる浅川近くの住宅地の一角に、隠れ家のようにひっそりとたたずむ「南と華堂(なんとかどう)」。
店内には、店主の井上 優子さんが厳選した絵本が所狭しと並んでいます。


井上さんが絵本に魅力を感じたのは子育てがきっかけ。
「子どもって、何回も同じ本を読んで!って言うんですよね。親としてはいろんな本を読んでほしいと思うんですけどね。それで、私も同じ本をずっと読み聞かせしているうちに、絵の細部に描かれているものや物語の根底に流れている深い思いに魅力を感じるようになったんです。」

その魅力を伝えていくために、お店を開きたいと思ったそうですが、
当時は地元の日野市に住んでおらず、相談できるご家族やご友人がいなかったことや、お子さんが小さかったことから、お店を持つことは難しかったそうです。

介護と自分のやりたいこととのバランス

それから数年経って、ご家族の介護をするために、地元日野に戻ることになりました。

「日野に戻ったら、家族や友人などお店を開くためのサポートをしてくれる人も多いし、実家の一角がたまたま空いていたので、介護もしつつ、そこでお店を開こう!と思っていました。しかし、実際に介護をやってみると、想像以上にハードで…こんなに大変だとは思っていなかったんです。
日野に戻ってきてから2年間は本当に余裕がなかったです。」

そんな中、夢に近づく転機がおとずれました。
2019年、東京にある吉祥寺のブックマンションの募集の広告を見つけ、これだ!!と思ったそうです。少しずつでもできることからやってみようと思い、応募しました。
そして、棚ひとつ分の小さな本屋の"店主"になったのです。

ブックマンション…小さな本屋の集合体で、本を持ち寄り、みんなで運営するというもの。店舗内に設置した本棚を借りた人が、そこで本を販売することができる。

「お店に立つのは2.3か月に1回だったのですが、お客様とお話しすることもあり、刺激がありました。小さな棚を借り、好きな絵本を置いて、自分の夢に少し近づけた気持ちでした。でも、いろんな欲が出てきて、もう少しお客様と話したい、自分の世界観を表したようなお店が欲しいという想いが強くなってしまったんです。」

井上さんが伝えたい想い

心に抱えていた悩みをご家族の介護ヘルパーさんに雑談程度に話したところ、
「家の一室で使っていない場所があって、井上さんなら顔見知りだし、信頼できるから、貸すことできるよ。」とお話があったそうです。

当時借りていたブックマンションの運営者の方にもご相談したところ
自分のことのように喜んでくれ、背中を押してくれたそうです。
また、ご家族はお店を開くことを心配していたそうですが、井上さんの想いを知り、今では良き理解者となってくれました。
そうして、2020年、今の場所に「南と華堂」がオープンしました。

「子育ても介護もすごく大切なことです。だからといって、自分の夢を諦める必要もないから、自分のできる範囲で夢を叶える方法を模索していくのがベストだと思うんです。」

「自分にとって介護の経験は多くの人との出会いやお店を開くきっかけになりました。
これからは、わたしの経験を生かして、訪れる方の夢を応援したいと思います。絵本を読みながら、みなさんが夢を描くきっかけの場所になってほしいです。」


いまはネットやSNSがあって、いつでもどこでも人とつながれるような時代。
でも、あえて足を運んで、居心地の良さを求め、話したくなる場所がまちのいたるところにあればいいなと思います。
南と華堂が、多くの人にとっての「居場所」になりますように。


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