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自分のためではなく、周りの人のために生きたい――在日外国人の想い

こんにちは!日野市の職員Mです!
日野市に暮らす外国人は約3,500人。外国にルーツをもち、日本で生まれ育った子どもたちも増えています。
しかし、同じ地域に暮らしていても、言葉や文化、生活習慣の違いのために誤解や偏見も生まれやすく、不安を感じている外国人もいるはず。
そんな不安や困難にぶつかった時期を経て、自分らしい道を模索し、居場所を見つけた陳 家翠(チン エミ)さんにお話しをお伺いしました。

日野で暮らすきっかけ

陳さんは中国出身で、日野に暮らし始めて12年になります。
現在は日本人のご主人と14歳の長女と11歳の長男の4人で市内に暮らしていますが、お子さんの子育てをきっかけに日野に暮らすことになったそうです。

「主人とは中国で出会い、結婚し、子供を授かりました。長女が生まれてから2歳になるまでは、主人は仕事でほぼ日本にいて、私は中国で子育てをしていました。
子育てをしているときにふと思ったんです。この子の成長のためには二人で子育てした方がいいと。
それで、主人が住んでいた日野で、2010年に生活をはじめました。」

日本での生活で困ったこと

それまで縁もゆかりもなかった日野市に急に引っ越してきた陳さんですが、すぐには日本の文化になじめませんでした。

日本には独特のマナーや暗黙のルールがあるかと思いますが、私には理解することができませんでした。
例えば、子供が通っている幼稚園の先生から「お子さんが園庭でボール遊びをした時に、後片付けをしなかったのでご自宅でも注意してくださいね。」と言われたことがありました。何が悪いか理由を説明されなかったので、ボール遊びのルールや、後片付けの約束が分かりませんでした。
だから、何回も同じことをして注意されることもあって、誰も私のことを認めてくれないんだと孤独を感じるようになりました。
当時は、その悩みを話せる人もいなくて、とても辛かったです。」

国際交流協会との出会い

日本でつらい生活を送ることになってしまった陳さんは、あることをきっかけに日野市の国際交流協会で開催している週1回の日本語教室に参加するようになります。

「私は来日した時点で日本語能力試験2級(※)を持っていたので、日本語はある程度理解することができていました。当時、主人が勤めている会社の同僚の奥さん(中国人)や子どもが同じ幼稚園に通っている中国人のお母さんと仲が良く、彼女たちから日本語が難しいと相談を受けていました。
そこで、無料で日本語を教えてくれる場所を探したところ、国際交流協会の存在を知り、彼女たちに紹介しました。
次第に、彼女たちからは日本語教室での様子や新しい友だちができたことを聞くようになり、私もいろんな人と友だちになりたいなと思うようになりました。
なので、日本語を勉強するというよりは、友だちづくりの場所として参加するようになったんです。

※日本語能力試験2級…日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる

「日本語教室では、ボランティアの先生たちが日本語を教えてくれるだけでなく、生活する上でのアドバイスや悩み、雑談などたっぷり話すことができました。
そして、今までいろんな人から注意されてきたことについて、何が悪いか理由も教えてくれました。
この週1回の教室が私の心のよりどころになったんです。
私は次第に私以外にも悩んでいる外国人の方の手助けをしてあげたいと思うようになりました。

陳さんはそう思うようになってから、さまざまなボランティアに挑戦するようになりました。

「私は国際交流協会の日本語教室のボランティアから始めました。
ひょんなことから、協会の職員の方から他のボランティアもやってみないかとお誘いがあり、市発行の冊子の翻訳や外国人の生活相談、小中学校での外国人の児童・生徒の授業支援をするようになりました。
最近では市の防災案内冊子の翻訳をしています。」

付箋には「10月18日 首要作(確認しないといけないところ)」と書いてありました。

人に頼りにされる喜び

最後に、陳さんに今後どうなりたいかを伺いました。

「私は今後もこのボランティアの活動を続けていきたいと思っています。お金を稼ぐことより誰かに必要とされていることの方が私にとっては重要なことなんです。 

だから、国際交流協会からのお誘いもなんでも引き受けようと思っています。
昔だったら、私なんて何もできないから・・・と断っていたと思います。
でも、職員の方や周りのボランティアの方が陳さんなら出来るよ!やってみようよ!と言ってくれて、自信がついたことで他のこともやってみようかなという気持ちになったんです。
また、自信がついたことで、少し間違っても、まあいいかと笑えるようになりました。

日本で不安を感じている外国人の方もそう思えるように、これからも力になれるようなことをしていきたいです。

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ボランティアと聞くと、“誰かのため”に何かをするというイメージが強かったのではないでしょうか?実は、ボランティアは自発的でかつ自主的な活動という要素も含むそうです。
陳さんはもちろん誰かのために活動したいという想いも持っていますが、何よりも自分がしたいからその活動をしていて、それをとても楽しんでいる様子でした。
相手が嬉しいと、自分も嬉しいですよね。
まちのいたるところで、嬉しいが繋がっていくようなハッピーの好循環が作られていけばいいなと思います。

私は取材を通して、街の中の新たな発見が出来てとても嬉しく、毎回ハッピーな気持ちになっているんです!これからもこの気持ちをお伝えして、皆さんもハッピーな気持ちになってもらえたら嬉しいです。